文化財研究所
文化財研究所

人文科学と自然科学が融合した、
総合的な文化財研究を進めています

本研究所はシルクロード総合学術センターと文化財科学研究センターの2つの研究センターで構成されており、文化財や文化遺産に関する調査研究、保存修復、文化財科学教育などの活動を行っています。施設は山梨県笛吹市に設置されており、地域を見据えながらグローバルに研究成果を発信しています。

トピックスTopics

文化財研究所について

研究所の理念

文化財を保存・活用し、歴史研究の資料とするためには、人文科学的観察と自然科学的分析の文理融合が不可欠です。本研究所では最新の分析装置を駆使した研究が進められており、関連学会から高い評価を得ています。さらに、国内外から専門家を招聘し、技術研修や研究交流もさかんに行われています。また、大学院生用の宿泊施設も完備し、学生が集中して研究に取り組むことのできる環境を整えています。
豊かな自然を擁する山梨に設置された本研究所は、文化財の調査・研究・保存を行うことを目的としています。さらに、それらの成果を公開・活用することで、文化財保護活動の推進を図ることをめざしています。

設立の経緯

本研究所は、設立当初より埋蔵文化財の調査研究を行う部門と、各種分析・保存科学・保存処理を行う文化財科学部門によって構成され、長年社会に貢献してきました。2012年4月からは、帝京大学の研究所として新たに発足し、埋蔵文化財の調査研究にとどまらず、文化遺産の保護活用など、幅広く文化財を題材とした高水準な研究と教育を世界に発信しています。
より高度な研究活動を行っていくため、さらには教育活動の場としてさらに快適な環境を提供するため、帝京大学文化財研究所として発足に至りました。研究と教育という大きな課題に総合的に応えるため、国内外での調査研究、専門家の技術研修などを実施するとともに、八王子キャンパスでの担当教員の授業の開講や、大学院生に向けた施設の開放など、これまでの活動に加えてさらなる貢献をめざします。

所長
所長
山内 和也教授

1986年帝京大学文化財研究所の前身、財団法人山梨文化財研究所が山梨県石和町(現在の笛吹市)に設立されました。
設立当初から考古学だけでなく少人数ながらも理系の文化財科学部門(各種分析、保存科学、出土品の保存処理)を擁し、埋蔵文化財の調査研究のほか、多方面におよぶ学術的貢献を中心課題として活動を続けてきました。その間、さまざまな調査研究のかたわら、シンポジウムの継続的開催、環境負荷の少ない文化財保存法の開発、考古学と連携した土器の自然科学的調査分析など新しい学問分野の開拓・確立に意を注いできました。

2012年4月、当研究所はより高度な研究水準をめざすとともに教育活動にふさわしい機関とするべく帝京大学の研究所として新たに発足することとなりました。現在ではシルクロード総合学術センターと文化財科学研究センターの2つの研究センターを設置し、より幅広く文化財・文化遺産を対象とする学際的な調査・研究を行っております。
設立から三十数年を経た当研究所は、山梨県という地域の歴史をしっかり見すえつつ、日本、さらに世界に向けて学術情報を発信するという、他に例のない特長を備えることとなりました。文系と理系、歴史学と考古学・文化財学、研究と保存と教育が融合一体化した新しいかたちの大学研究所となっております。
今後私どもは埋蔵文化財や美術資料から伝統文化、文化的景観まで幅広い文化財を対象に、常に現場・現物を重視しながら活動を推進し、東アジアをはじめとする世界の文化財の保護に微力ながらお手伝いしたいと考えています。ますますのご支援ご協力を切にお願い申し上げる次第です。

所長
山内 和也教授

植月 学准教授
藤澤 明准教授
櫛原 功一准教授
佐々木 蘭貞准教授
金井 拓人助教
赤司 千恵助教
齊藤 茂雄講師
山田 大樹講師
牧野 真理子助教
河西 学研究員
畑 大介研究員
宮澤 公雄研究員
平野 修研究員
望月 秀和研究員
三浦 麻衣子研究員
鈴木 稔研究員

(2022年11月現在)

研究・教育活動

文化財の調査・研究とその保護を行うと同時に、専門性の高い人材の育成を行っています。また、本研究所は設立当初から今日に至るまで、積極的にシンポジウムやセミナー等を開催し、積極的に情報を発信しています。

シルクロード総合学術研究センターでは、シルクロードに関わる歴史や文化、遺跡、文化遺産について学際的に調査・研究を行っています。

■キルギス(中央アジア)
キルギス共和国の北部に位置するアク・ベシム遺跡はスイヤブと呼ばれた国際的な交易都市で、6世紀の初めには玄奘がこの地を訪れました。中国の唐代には、西域経営のもっとも西の拠点である砕葉鎮が置かれていました。私たちは、キルギス共和国科学アカデミーと一緒に、この地で育まれた文化や歴史の解明をめざしています。

■イラン(西アジア)
イランは歴史に残る大帝国が登場し、華麗なペルシア文化が花開いた場所です。この地に生まれた工芸品が、シルクロードを通じて遥か東の国である日本にもたらされました。私たちは、イラン文化遺産・工芸・観光庁およびイラン国立博物館と一緒に、このイランの素晴らしい文化遺産の調査・研究、そしてその保護に協力しています。

■ジョージア(コーカサス)
コーカサス地方の中ほどに位置するジョージアは、古くから独特な文化を生み出してきました。ワインの発祥の地とされているだけでなく、初めて青銅器を生み出した場所であるとも考えられています。私たちは、ジョージア国立博物館およびジョージア文化遺産保護庁と共同で金属の合金技術や青銅器の誕生の謎を探っています。

文化財科学研究センターでは、文化財の科学研究や保存修復の研究を大きな柱として、文化財を総合的に研究し、それを護る活動を行っています。

■文化財科学研究
各種の光学調査、X線透過撮影装置やデジタル顕微鏡を使用した観察、蛍光X線分析計、フーリエ変換赤外分光光度計や高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を使用した材質分析、質量分析計を使用した鉛同位体比測定による産地推定まで幅広く行っています。文化財から科学的情報を引き出し、文化財の価値を多角的に検討しています。

■保存修復研究
文化財を後世に伝えるため、金属文化財や木質文化財などの保存修復を実践しています。近年増加している保存修復への要望に応え、社会的な貢献をめざしています。また、既存の方法で保存修復を行うだけでなく、より安全に資料を保存する方法の開発をめざしていきます。

考古学や日本史学などの文系分野と、文化財科学や物質科学などの理系分野の文理融合をはかり、教育と研究の学融合を強く意識した教育を実施しています。

■美術史・文化遺産実習
近年、顕著な普遍的価値をもつ世界文化遺産や自然遺産が世界の人々に注目されていますが、我々の身近にも多様な価値をもつ膨大な数の文化遺産が存在します。この実習では地域の文化遺産を実際に訪ねて、文献史料や石造物等の調査・資料化作業を体験し、史跡等の歴史や整備・活用法などを学びます。

■文化財科学実習
文化財を保存・活用し、歴史研究の資料とするためには、人文科学的観察とともに自然科学的分析が不可欠です。この実習では土器や石器を構成する造岩鉱物の観察や、金属製品のもととなった合金の特定など、機器分析の原理や手法を習得します。さらに、分析によって得られた情報をもとに、文化財の保存修復方法を検討します。

■考古学総合実習
考古学における遺跡の発掘調査には、観察・測量・分析といった技術力のほか、準備から調査終了までの手順や成果の公表、法的手続きといったマネジメント力が必要です。この実習では発掘調査から報告書作成までの過程を体系的に経験し、技術とマネジメント力を実践的に身につけます。

■ 「帝京大学文化財研究所研究報告」
第1集(1989年)
第2集(1990年)民俗学特集
第3集(1990年)シンポジウム「戦国期城下町と城」
第4集(1992年)
第5集(1994年)小特集「中世城館と民衆」
第6集(1995年)特集「縄文時代中・後期の住居をめぐる諸問題」
第7集(1996年)特集「古代の土地開発」
第8集(1997年)特集「中世の考古学」
第9集(1999年)特集「中世城館の考古学」 小特集「在地・地域を考える」
第10集(2002年)特集「中世石造物と社会」
第11集(2003年)特集「古墳時代中期の諸様相」
第12集(2004年)特集「韮崎市上手沢遺跡と縄文集落」
第13集(2009年)特集「古代地域社会の諸相」 
第14集(2010年)特集「治水と利水の考古学」
第15集(2011年)特集「土器の胎土分析と製作地推定」
第16集(2017年)
第17集(2018年)

■「帝京大学山梨文化財研究所報」第1号(1987年)~第53号(2011年)

■「帝京大学山梨文化財研究所シンポジウム報告集 考古学と中世史研究シリーズ」

  1. 「考古学と中世史研究」(1991年)
  2. 「中世都市と商人職人」(1992年)
  3. 「中世社会と墳墓」(1993年)
  4. 「中世資料論の現在と課題」(1995年)
  5. 「「中世」から「近世」へ」(1996年)
  6. 「中世日本列島の地域性」(1997年)

■「帝京大学山梨文化財研究所研究集会報告集 遺跡・遺物から何を読みとるかシリーズ」

  1. 「遺跡・遺物から何を読みとるか」(1998年)
  2. 「食の復元 ―遺跡・遺物から何を読みとるか」(1999年)
  3. 「住まいと住まいかた ―遺跡・遺物から何を読みとるか」(2000年)
  4. 「ムラ研究の方法 ―遺跡・遺物から何を読みとるか」(2002年)

文化財研究所オリジナルサイト

交通アクセス

〒406-0032 山梨県笛吹市石和町四日市場1566-2
TEL:055-261-0015 FAX:055-263-6742

電車利用の場合
JR「新宿駅」から中央本線特急で約90分(※1)JR「石和温泉駅」にて下車
JR「八王子駅」から中央本線普通電車で約95分(※2)JR「石和温泉駅」にて下車
JR「石和温泉駅」から徒歩約25分、タクシーで約8分

  • ※1かいじ号は全列車停車しますが、あずさ号・スーパーあずさ号は停車しないことがあります。
  • ※2JR「高尾駅」での乗り換え時間は含んでおりません。

高速バス利用の場合
「バスタ新宿」から中央高速バスで約110分、「石和バス停」にて下車
「石和バス停」から徒歩15分、タクシーで約5分

車利用の場合
「国立府中I.C.」から中央道約70分、「一宮御坂I.C.」にて下車
「一宮御坂I.C.」から約10分

主な施設

主な施設
保存修復室:金属製品や木製品の保存修復に利用(2017年改築)
機器分析室:誘導結合プラズマ質量分析装置・蛍光X線分析装置などを配置
大ホール:180人収容。シンポジウム・講演会に利用
寄宿舎棟:各種実習での合宿などに利用(2011年改築)
管理棟:各種実習での合宿などに利用(2016年設置)
書庫棟:閲覧室と書庫(都道府県別発掘調査報告書や各種学術論文など)