学長 冲永佳史からのメッセージ
学長 冲永佳史からのメッセージ

TEIKYO SDGs Top Interview叡智が拓く発展の扉

- 蓄積された叡智が、新しい未来を拓く -
理事長・学長 冲永佳史

未来を創造するということ

SDGsには17のゴールと169のターゲット、そしてそれぞれの指標設定があり、課題設定の範囲は世界のあらゆる分野や地域に及びます。ひとつひとつはマクロな指標のため、産業界をはじめ、一般生活者の我々にとっても、行動に表すにはどうしたらいいのか悩む方は少なくないでしょう。SDGsの本質は2つあると考えています。一つは「発展」。決して意識を過去に戻すのではなく、未来を創造していくことに価値を見出す姿勢を示している点です。二つ目は「持続可能性」。この一言で「発展」という概念が、これまでと全く異なる方向を示すことになります。言い換えるならば、”これまで人類が積み上げてきた叡智”を総動員し”これまでとは異なる持続可能な社会を作り上げる”ことを意味しているのです。ニュートンの名言に「私が遠くを見ることができたのは、巨人たちの肩に乗っていたからです。」というものがあります。”自分が見てきたものは、過去から続く偉大な先人たちの蓄積の上に立たなければ見えるものではなかった”という意味だとされます。SDGsを達成するためには、まず人類が蓄積してきた叡智をしっかり理解することが重要だと考えています。

未来を創造するということ

SDGsの背景

近現代における人類発展の歴史は、エネルギーと科学技術の歴史でもあります。特に人類社会が飛躍的に進歩したのは、150年ほど前のイギリスでの産業革命とされます。蒸気力の応用と機械工場による技術革新が進み社会のあり方も劇的に変化しました。以後人類は、石炭に始まり、石油、天然ガス、原子力など次々に新しいエネルギーを社会のために生かしてきました。20世紀前半の2度の世界大戦後、1950年代には平和な時代が到来し本格的な高度経済成長が始まります。同時期に経済発展と環境問題の軋轢が増し、1962年にはレイチェル・カーソンが環境学の名著とされる『沈黙の春』を発表。日本でも1950年代から1970年代の間には、数多くの公害病が生まれ社会的に環境意識が高まることになりました。地球は無限であるという意識であったものが、有限であるという意識に変容していくのもこの頃だと言えます。その後、1990年代のグローバリゼーション、2000年代の情報化社会などの変化により、人類社会は全く新しい可能性を手にしました。こうした歴史の中には常にエネルギーがあり、同時に革新的な科学技術の進歩と経済的な成功がリンクすることで「発展」が実現していく前提がありました。しかし2000年代前後には、こうした発展が持続可能ではないということが、気候変動をはじめとする自然災害の増大やさまざまなビックデータによって示されるようになりました。影響は環境の変化に止まりません。富裕層と貧困層、先進国と途上国、都市と地域など、社会のあらゆる面で生じた格差が不均衡を拡大させています。これだけ広範で複雑な課題を、SDGsがゴールとターゲット、そして指標によって整理していることには大きな意義があります。

帝京大学の未来

帝京大学の未来

このように考えてみれば、自然科学や人文哲学、さらには数学、工学をはじめとする先端分野にいたるまで人類の叡智を網羅し、研究しながら深め次代につなぐ大学は、存在そのものがSDGs的であると言えます。そして今後は、さらに行動を強化していくことが重要だと認識しています。私たち帝京大学は、1966年の創立以来、「実学」「国際性」「開放性」を教育指針として掲げてきました。実学を通して論理的思考を身につけながら、力強く行動できる人材でなければ、SDGsのゴールを導くことは難しい。大学には、社会人まで含め幅広い人材が集います。必ず、新しい未来を創造する存在がここにはいます。一方、現代においてより強まっているとされる保護主義に傾倒し過ぎれば、搾取や不均衡が助長されかねません。国際性や開放性を有していることは、平等を重んじ全体最適を意識した上での豊かなコミュニケーションを蓄積し、新しい未来への筋道を描くことにつながります。だからこそ、この難しい時代にあっても、帝京大学の建学の精神はいささかも揺らぐことはありません。むしろ、SDGsの骨子に合致した行動を生み出す精神へと昇華されていくと確信しています。

「より良い」を世界に

SDGsが目指す社会を一言で言うならば「より良い世界」ということになるでしょう。細部に至るまで”より良く”するためには、多くの声に耳を傾け知恵を身につけ、丁寧に力強く行動することが肝要です。私たちの世界や国家、社会は複雑な歴史を経て形作られており、未来においてこれらすべてが統合されすぐに改善されるためには、急激な変化を実行しなければ、地球環境や社会環境は取り返しのつかないほど悪化の一途を辿るということでもあります。私たちの社会は岐路にいます。気候変動による巨大な自然災害への対応、コロナウイルスのような疫病で生じる社会の変化、未来における我々の経済発展のあり方にいたるまで、解決には世界全体の力が求められます。こうした時代における一つの意思表示として、私たち帝京大学では学内に蓄積された”社会をより良くする行動”をテーマに、多様な研究成果を筆頭にさまざまなアクションにフォーカスします。そして、持続可能な社会実現への「シード=種」の詰まった場として丁寧に醸成してまいります。

学長からのメッセージ