研究とSDGsのつながりを知る。TEIKYO SDGs Report 帝京大学の先生たちが行っている研究活動内容がどのようにSDGsとつながっているのかをひも解きます。

今回の先生

帝京大学経済学部  講師

永井リサ 先生

どんな先生?

専門は、環境史、生態史、中国東北史で、大学院時代に中国に留学。中国東北地方の森林ビジネスの歴史に精通し、現代の経済や資源の状態から歴史的な背景を遡って研究。大阪大学大学院にて特任研究員、2014年に中国・大連大学講師、九州大学総合研究博物館で研究に従事後、2020年から現職に就任。

WHAT ARE 17GOALS OF SDGs? SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2030年までに達成すべき17の目標を掲げています。

歴史や文化を道標に、世界の“いま”を知り、行動する 各国地域の社会や自然環境は、経済や戦争、災害などに翻弄されやすく、SDGsに共通した課題が多くあります。永井ゼミでは、ゼミ生の提案により途上国の児童に給食を寄付する取り組みや途上国の文化・歴史を調べて現状を訴える展示を、すべてゼミ生主体で行いました。

学食のメニューを頼むと寄付できるTFT活動をゼミ生が実施

永井ゼミは、八王子キャンパスの学食においてTABLE FOR TWO(通称TFT)活動(対象のメニューを頼むと、アジア・アフリカの国に給食1食分=20円が寄付される)を実施。提供国のひとつであるケニアの文化や経済状況をまとめたパネルも展示した。

活動を通して「なぜ寄付を受けないと給食が提供できないのか」思いをはせる

これらの活動は、すべてゼミ生主体で実施。というのも永井先生は、なぜ寄付を受けなければ給食の提供がままならないのか、歴史的背景をふまえたうえでTFT活動が持つ価値や意味を正確に把握してほしいと考えたからだ。

環境と経済は密接な関係にあり歴史は現状把握のヒントになる

永井先生の専門は環境史で、とくに中国東北地域を研究。山西省に短期留学した際、歴史的に豊かな森林地帯が、雑草も生えないほど砂漠化した状況を目の当たりにする。歴史をひも解くと、中国東北地域では日露戦争や南満洲鉄道の開業などで膨大な木材が利用されたことがわかる。歴史を知ることは、現状把握のヒントとなる。

近現代のグローバル社会では世界規模で社会課題を考える必要がある

また、途上国では植民地期の経済構造が残存し、原料供給地として単一作物を作らざるを得ない状況も。しかし災害や紛争などで作物が育たないと村が一気に飢饉に陥ることも珍しくない。グローバル経済の中で、途上国がいかに自立した未来を作れるのかは世界的な課題となっている。

歴史や構造を知ることで、将来学生が未来の扉をひらく可能性も

歴史的背景まで考慮するとSDGsの裾野は非常に複雑なことがわかる。こういった歴史や構造を知ることで、将来、プロジェクトを実施した学生が本格的にSDGsに向き合う国際的企業に就職したり、社会課題に取り組む起業家になる可能性もある。学生が新しい未来を切り拓く存在になることこそ、SDGs実現への貢献の第一歩となる。