研究とSDGsのつながりを知る。TEIKYO SDGs Report 帝京大学の先生たちが行っている研究活動内容がどのようにSDGsとつながっているのかをひも解きます。 研究とSDGsのつながりを知る。TEIKYO SDGs Report 帝京大学の先生たちが行っている研究活動内容がどのようにSDGsとつながっているのかをひも解きます。

今回の先生
今回の先生

帝京大学理工学部機械・精密システム工学科
准教授

池俣 吉人 先生

どんな先生?
どんな先生?

名古屋工業大学大学院博士後期課程修了。大学院から受動歩行ロボットの研究に取り組み、同大学の特任助教に。2009年にはチームで開発した受動歩行ロボットが13時間を超える連続歩行を実現し、ギネス世界記録™に認定。2012年から現職に就任。

WHAT ARE 17GOALS OF SDGs?
WHAT ARE 17GOALS OF SDGs?

歩く“原理”の解明があらゆる進化のヒントに。1980年頃のカナダで研究が始まった受動歩行ロボットの研究を続けている池俣先生。動力を使用しない歩行は当初数歩が限界だったが、先生の研究チームが数万歩歩けるロボットの開発に成功。歩行の原理の解明は、身体的な支援のサポートだけでなく、既存の技術や考え方を進化させるための素地になりうる。

下り坂で動力なしに歩く受動歩行ロボットとの出会い

受動歩行ロボットは、航空工学の専門家だったカナダのタッド・マクギア博士によって誕生。数歩歩くと崩れ落ちるものだったが、世界に与えたインパクトは計り知れず、池俣先生も博士の研究動画をきっかけに二足歩行の原理を追求する研究に没頭していった。

コンピューターを用いたシミュレーションから導き出された2つのポイント

下り坂にボールを転がすと加速するが、人間は一歩ごとに加速しないよう制御をかけて一定の速度で歩けるよう「安定化」をはかっている。池俣先生は、長時間の歩行のためには、一定のリズムで足を出し続ける「平衡点」を作り出すことと、この「安定化」がポイントであることを導き出した。

シンプルに考えることで迷走状態を打破

その後苦しい迷走状態が続くも、たまたま目にした“複雑に考えず単純に考えろ”という趣旨の言葉をきっかけに状況を打破。歩幅が一定になるよう制約して歩かせることで、数百歩歩けるロボットを開発。2005年には、平衡点の生成と安定化の原理を導くことに成功し、2009年には13時間を超える連続歩行でギネス世界記録に認定。

原始的な機構の分析は大きな価値の発見につながる

先駆者のマクギア博士も、一定の速度で坂道を転がる糸車のような構造体をつくり上げるなど、シンプルな構造物を用いた分析を積極的に行なっている。最終的なロボットの機構は複雑なものだが、原理が判明すれば大きな価値の発見につながり、確実に前進できる。

原理を追求するプロセスで得たデータや知見が文明を前進

原理の追求は、次の原理への入口を開くことでもある。池俣先生の研究は、高齢者や障がい者の歩行支援や歩行支援器具の開発など、科学の発達にもつながる。それは17のゴールを追求するSDGsにおいても同じ。原理を追求するプロセスで蓄積されたデータや知見は、文明を前進させる力強い歩みになりうる。