研究とSDGsのつながりを知る。TEIKYO SDGs Report 帝京大学の先生たちが行っている研究活動内容がどのようにSDGsとつながっているのかをひも解きます。

私の研究活動はSDGs17の目標の「3.8.10.16.17」に関連します。Kiyomi Itonaga
今回の先生

帝京大学福岡医療技術学部看護学科 助教

糸永喜代美 先生

どんな先生?

看護師として臨床現場での経験を持ち、九州看護福祉大学大学院にて「イラショナル・ビリーフ」について研究、同大学非常勤実習助手となる。2021年より帝京大学福岡医療技術学部で教鞭をとる。

WHAT ARE 17GOALS OF SDGs? SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2030年までに達成すべき17の目標を掲げています。

イラショナル・ビリーフの改善 医療には多くの専門職が携わっている。相互の連携が大切だが、「イラショナル・ビリーフ」と呼ばれる思い込み=「〇〇せねばならない思考」が、そうした連携を妨げることが多い。この状況改善のためには「喜びの共有体験」が役立つことがわかっている。SDGsにも「イラショナル・ビリーフ」が散見しているため、糸永先生の研究の先には、SDGs解決の大きなヒントがある。

医療現場には専門職同士の連携課題がある

医療現場において、入院患者に対して日常的に接するのは介護士であるケースが多い。ところがガーゼ交換などの処置は看護師でなければできない。介護士が看護師を呼ぶも、別の業務に忙殺されている看護師は対応が後手に回ることもあり、専門職同士で複雑な気持ちを抱え、わだかまりが残ることがあった。

イラショナル・ビリーフが関係している?

この解決策を調べるうちに、看護職は「イラショナル・ビリーフ」が強くなる職種であることがわかってきた。イラショナル・ビリーフとは、非合理的な思い込みと訳される。例えば、「絶対にミスしてはいけない」と思い込むことでうまく行動できなくなる、ストレスが高まるといったことが該当。

改善するためには「喜びの共有体験」が有効

このイラショナル・ビリーフによる相互連携の不具合を改善するためには、職場でスポーツやレクリエーションを行って一緒に笑い合うといった「喜びの共有体験」が有効であることがわかった。現在は医療現場だけでなくさまざまな分野で応用されるようになっている。

改善の第一歩は、思い込みがあるという自覚から

改善のためには、まずイラショナル・ビリーフがあることを自覚する必要がある。「ヤングケアラー※」は、自覚を促すことで成功しているケースのひとつ。ヤングケアラーという言葉が社会認知を得たことで当人が状況を自覚しやすくなり、「親に代わって働かなければ」といった思い込みから解放され、周囲との連携やみんなでケアする状況が生まれやすくなった。 ※本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行なっている子どものこと

イラショナル・ビリーフの研究がSDGsの理解を深める

同様に、SDGsという言葉は自分たちの状況把握を促し、社会に共通の危機意識を芽生えさせた。SDGsにはさまざまな課題があるが、異業種同士が連携して解決に貢献することは、新しい「喜びの共有体験」の創出につながり、SDGsへの理解がさらに深まっていくはずだ。