帝京大学 教育学部教育文化学科 准教授
鈴木 賀映子 先生
大学卒業後、都内中学・高校の教諭として教鞭をとる。その後、中米エルサルバドル共和国の教育省で現地の教育活動に携わる。帰国後、大学院に進学してラテンアメリカ地域の学校教育について研究を深める。帝京大学教育学部に入職し、現在に至る。
鈴木先生の研究テーマの一つは、アメリカとメキシコの国境地域を対象に、国境学(ボーダースタディーズ)の枠組みを比較教育学に応用する研究。教育は、国民形成や言語、アイデンティティ、移動といった国境の機能と深く結びついた学問領域のため、国境地域と教育は親和性の高いテーマと考えている。
カリフォルニア州サンディエゴとメキシコ側のバハ・カリフォルニア州ティフアナ間の地帯では、毎朝数多くのメキシコの親子がアメリカ側に越境し、子どもは学校へ、親は仕事へ向かう。仕事を終えると子どもを迎えに行き、メキシコの家に戻るのが日常。アメリカの賃金水準が高いため収入が増えること、アメリカ側もメキシコの労働者を頼りにする面があり、互いに支え合う関係が存在している。
国境学では、この現象を国境の「透過性」と捉える。これは、国境がすべてを遮断する「壁」ではなく、細胞膜のように通す/通さないを選択するものとして機能し、教育機会が移動しているという考え方。カリフォルニア州では、アメリカの居住証明書などを保有していれば、基本的にすべての子どもに教育を受ける権利が保障されている。
カリフォルニア州の小学校では、コロナ禍で国を越えてオンライン授業が実施され、ネット環境ながい家庭にはポケット Wi Fi などが貸与された。英語のほかスペイン語で取り出し授業が行われる、バイリンガル資格を持つ教師を配置する学校も増えるなど、異文化や多様な生活層の人々がいる中で、メキシコの児童が違和感なく生活する環境がある。
SDGsの17のゴールはそれぞれ色を持ち、境目があるように見えるが、拡大すると境目では色が混じり合い、グラデーションになっているはず。教育、経済問題といった色分けできない一続きの世界的課題には、ボーダーで区切って捉える思考と、グラデーションで捉える思考の両方が必要。遮断か浸透か、その両方か、教育においても社会の未来を考えるうえでも、その働きを理解することが不可欠だ。