2026年04月22日
2026年3月31日(火)、帝京大学医真菌研究センター准教授 山田剛らの日本・スイス国際共同研究チームが、代表的な真菌症治療薬であるアゾール系抗真菌薬(アゾール)に耐性を示す白癬菌(水虫)のゲノムに広がるアゾールの作用標的分子をコードする遺伝子の大規模重複(tandem duplication)の全容を明らかにしました。
本研究成果は、2026年3月31日(火)に米国微生物学会(American Society for Microbiology)が出版するAntimicrobial Agents and Chemotherapyに掲載されました。
これまで、山田准教授とスイス・ローザンヌ大学生物学・医学部および同大学病院名誉教授Michel Monod氏を中心とする国際共同研究グループは、アゾールの作用標的分子であるCYP51タンパク質をコードするCYP51B遺伝子を含むゲノムDNA領域が多数縦列に重複し、CYP51タンパク質が過剰産生されることがアゾール耐性化につながっていることと、重複するゲノムDNA断片の長さを基にアゾール耐性菌をI型とII型に分類できることを明らかにしてきました。ただし当時は、ゲノムDNA断片の重複の規模が大きく、その領域全体の構造までを明らかにすることができませんでした。
今回、高分子ゲノムDNAを蛍光ラベルし、光学的に読み取ったパターンを基にゲノムの構造的変異を検出するオプティカルゲノムマッピング(OGM)技術を駆使して、I型・II型アゾール耐性菌のゲノムに生じたCYP51B遺伝子の重複数(コピー数)の特定を試みました。研究の結果、I型耐性菌(TIMM20119)では8回、II型耐性菌(TIMM20122)では20回におよぶ遺伝子の縦列重複を確認しました。さらに、I型耐性菌では、単一のプロモーター領域 から複数個のCYP51B遺伝子(オープンリーディングフレーム)が連続的に1本のmRNAとして転写されるポリシストロニック転写が行われていることを解明しました。
ポリシストロニック転写は主に原核生物の遺伝子発現で見られる現象で、一方、真核生物では、通常、1個の遺伝子が1本のmRNAに転写されるモノシストロニック転写が行われます。真核生物である白癬菌の細胞で、通常の遺伝子発現と異なるポリシストロニック転写が行われ、それが病原真菌の薬剤耐性の起因となることが明らかになりました。近年、NGS技術の発展に伴い、真核生物におけるポリシストロニック転写の例が徐々に報告されるようになりました。今後、白癬菌のゲノム構造解析をさらに進めることで、興味深い新たな生物現象が見出されることが期待されます。
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