植物オキシリピンの生理機能の解明とその応用

植物オキシリピンの生理機能に加えて、生合成制御機構やシグナル伝達の分子機構研究の世界的な研究拠点の一つとなることが期待されます

本研究における各研究課題は、生物有機化学、植物生理学、植物分子遺伝学、機器分析学、天然物化学などの広範な領域を含んでおり、また、最先端の質量分析計や、共焦点レーザー顕微鏡などのイメージングシステムを活用しています。

研究名 植物オキシリピンの生理機能の解明とその応用
事業番号 S1311014
研究代表者 山根久和教授
プロジェクト期間 2013年度〜2017年度

研究概要

研究概要

本研究は、単子葉植物のイネ、トウモロコシ、双子葉植物のシロイヌナズナ、トマト、バイオディーゼル油やカロテノイドの生産系として注目されている微細藻類、有用二次代謝産物生産を行う糸状菌などをモデル系として用い、植物ホルモンであるジャスモン酸など、脂肪酸の酸化的代謝物でオキシリピンと総称される生理活性物質の生合成・輸送の制御機構や生理機能に関わるシグナル伝達機構を国内外の共同研究者と連携して分子レベルで解明するとともに、オキシリピンの病害虫抵抗性誘導作用や二次代謝産物生産誘導作用に着目し、得られた成果を病虫害に強い作物の育種や新しい農薬の開発、および有用物質生産等の応用技術の開発に活用しようとするものです。

本研究における各研究課題は、生物有機化学、植物生理学、植物分子遺伝学、機器分析学、天然物化学などの広範な領域を含んでおり、また、最先端の質量分析計や、共焦点レーザー顕微鏡などのイメージングシステムを活用するものであることから、理工学部がオキシリピンの化学分析に限らず、生合成制御機構やシグナル伝達の分子機構研究の世界的な研究拠点の1つとなることが期待されます。

研究テーマ

テーマ

イネにおけるジャスモン酸の生合成とシグナル伝達

研究者

植物ホルモンであるジャスモン酸は、傷害や病原菌感染を含むさまざまなストレスによって誘導され、それらのストレスに対する防御応答において重要な機能を果たしていますが、ジャスモン酸生合成の誘導機構については殆ど未解明の状態です。本研究課題では、イネの野生型やいくつかのジャスモン酸生合成変異体を材料として用いて、それらにおけるさまざまなストレス処理後のジャスモン酸の内生レベルや生合成酵素遺伝子の発現解析を行い、生合成誘導機構解明の足掛かりを得ます。また、ストレス刺激のメディエーターとして機能する未知シグナル物質の同定も試みます。

イネは病原菌に感染するとファイトアレキシンと総称される抗菌性二次代謝産物の生産を含むさまざまな抵抗性反応を示します。我々はこれまでフィトアレキシン生産を病害抵抗性反応のモデル系としてシグナル伝達機構を解析し、ジャスモン酸依存性と非依存性のシグナル伝達系が機能していることを発見しました。そこで、ジャスモン酸非依存性のシグナル伝達系において機能する二次シグナル物質の同定を試みるとともに、ジャスモン酸依存性、非依存性の両シグナル伝達系のクロストークについても追究します。

テーマ

ジャスモン酸の生理機能研究のための化学プローブの合成

研究者

植物における植物ホルモンの輸送は、「生合成」と「受容体における認識以降のシグナル伝達」の間に位置する重要な要因です。本研究課題では、ジャスモン酸のさまざまな誘導体や立体異性体を化学プローブとして合成し、共同研究者の協力もとに、既知輸送体の性状解析や新規輸送体の同定を行います。また、得られた化学プローブについて、生理作用検定を行うとともに、生合成酵素の基質認識や受容体との相互作用を解析し、ジャスモン酸類の生理機能を構造化学的観点から検証します。

テーマ

プロゲステロンの植物生殖器官分化作用におけるジャスモン酸の役割

研究者

横田孝雄客員教授

ジャスモン酸は植物の雌しべと雄しべの発達に関与しており、花の正常な発達に必須な植物ホルモンです。トウモロコシの頂花はオス花ですが、ジャスモン酸が欠損すると、メス花に変化します。本研究では、ジャスモン酸の頂花分化における役割を解明するとともに、その下流にプロゲステロンが働いている可能性についても追究します。

テーマ

植物の組織癒合におけるジャスモン酸の生理機能

研究者

植物の茎が部分的に切断された場合、切断された組織は一過的にメリステマティックな状態へと移行し、元の組織同士を癒合させることで個体機能が回復することが知られています。本研究課題では、トマトやシロイヌナズナの組織癒合過程における遺伝子発現、およびジャスモン酸など植物ホルモンの時空間的変化と分子機能を明らかとすることで、ジャスモン酸の新規生理機能の解明と農業生産への応用を目指します。

テーマ

微細藻類におけるオキシリピンの生理機能

研究者

陸上高等植物ではさまざまな障害応答にジャスモン酸が関与することが知られていますが、これまで微細藻類における研究はほとんど報告されていません。我々はEuglena gracilis (和名:ミドリムシ)に内生にジャスモン酸が存在することを確認しており、さまざまな培養条件での内生ジャスモン酸量や生理特性を調べ、ジャスモン酸合成に関する分子レベルの解析を行うことにより、オキシリピンの進化系統や生理機能の多様性の解明を目指しています。

テーマ

微生物におけるジャスモン酸の生理機能

研究者

微生物でのジャスモン酸類の同定は、ジベレシン生産糸状菌であるGibberella fujikuroiやBotrytis cinereaなどの植物病原糸状菌から報告されていますが、他の微生物での報告例は少ないです。本研究課題においては、多種多様な有用二次代謝産物の生産能を有する微生物の中でも、その生育環境の異なる、寄生性糸状菌(昆虫寄生糸状菌や冬虫夏草菌)において、ジャスモン酸類の同定を試みます。ジャスモン酸類の同定が確認された後、これらの生産菌を用いて、ジャスモン酸生合成阻害物質の探索や外生ジャスモン酸の投与による二次代謝産物とジャスモン酸の関連を検討します。

テーマ

イメージング質量分析法によるジャスモン酸可視化法の開発

研究者

植物におけるさまざまなストレス応答にジャスモン酸が関与していることが示されています。しかしながら、現在のところ、ジャスモン酸に関しては有効な可視化手法が無く、植物組織中の分布はほとんど明らかになっていません。イメージング質量分析法は、質量分析を技術基盤とした分子イメージング手法であり、代謝産物の可視化手法として期待されています。そこで、本研究課題ではジャスモン酸の検出感度を高めるための前処理法を検討することで、イメージング質量分析法によるジャスモン酸可視化手法の開発を目指します。

本プロジェクトで導入した主要な研究設備・機器

共焦点レーザー顕微鏡

共焦点レーザー顕微鏡

(ライカ・TCS SP8)

蛍光標識した試料の連続断層像を高解像度のイメージで取得し、コンピュータによって三次元情報の再構築を行うことができる、現代の細胞分子生物学には必須のツール。

卓上走査型電子顕微鏡

卓上走査型電子顕微鏡

(日立ハイテク・Miniscope3030)

複雑な前処理なしに低倍率から数千倍までの観察でき、冷却ステージを備えているため、ダメージを受けやすいサンプルを乾燥させることなく観察することも可能。

レーザーマイクロダイセクション

レーザーマイクロダイセクション

(ライカ・LMD7000)

組織切片を顕微鏡で観察しながらレーザーで特定部位を切除し、回収できる装置。

イメージング質量分析計

イメージング質量分析計

(ブルカーダルトニクス・Ultraflextreme)

組織切片を直接質量分析し、得られた情報をもとに生体分子のイメージングができる装置。

高速液体クロマトグラフィー

高速液体クロマトグラフィー

(島津製作所)

培養された微生物から有効成分を分離・検出から単離、さらには有効成分の同定・定量まで広く対応できる装置

バーチャルスライドスキャナー

バーチャルスライドスキャナー

(ライカ・Aperio CS2)

組織標本、凍結切片などの高解像画像データの取得に使用する。

特定網室

特定網室

(カネコ種苗)

遺伝子組換え植物の育成、実験に使用する温室。独立した2つの栽培室を有する。

活動報告

■グループミーティング

タイトル

日時 場所

第1回

平成25年度の研究成果と平成26年度の研究計画

2014年4月25日(金)13:20~18:00

帝京大学宇都宮キャンパス

第2回

平成26年度の研究成果と平成27年度の研究計画

2015年5月22日(金)13:20~18:00
第3回

平成27年度の研究成果と平成28年度の研究計画

2016年4月22日(金)13:20~18:00
■研究集会の開催

植物電子顕微鏡サマーセミナー2014(第18回細胞構造研究会)の開催

電子顕微鏡(電顕)法は細胞内の超微細構造を明らかにする生命科学においては古典的かつ必要不可欠な技術でしたが、近年、電顕を扱うことのできる若手研究者は激減しています。当キャンパスは、戦略的研究基盤形成支援事業、施設設備事業計画等によって整備された最先端のイメージング設備を有しており、設備の有効活用や若手研究者・学生の活動支援を目的に、「植物電子顕微鏡ネットワーク」「細胞構造研究会」と連携して本セミナーを開催しました。

日時・場所

2014年8月26日、27日 帝京大学宇都宮キャンパス地域経済学科棟101教室

後援、協力など

植物電子顕微鏡ネットワーク・帝京大宇都宮キャンパス・日本女子大バイオイメージングセンター・理研CSRS

プログラム

・化学から見たTEM・SEM生物試料作製(講師:朴 杓允 神戸大学名誉教授)

・走査電子顕微鏡の試料作製と観察法・塩化ハフニウム水溶液の電子染色(講師:朴 文守 神戸大学研究員)

・電子顕微鏡観察に関するQ&A

・ポスターセッション

備考

施設見学会の様子

施設見学会の様子

講演会の様子

講演会の様子

ポスターセッション

ポスターセッション

理工学部バイオサイエンス学科の紹介

植物、食品、動物、微生物、生命工学、化学系分野等さまざまな研究分野を対象としています

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